慢性疾患コラム

2025.08.01 自律神経失調症

【自律神経失調症外来】「天気で体調が変わる…それ、気象病かもしれません」

こんにちは。岡崎ゆうあいクリニックの院長、小林まさのりです。

「天気が悪いと頭が痛くなる」「雨が降る前に関節がうずく」「季節の変わり目は、どうも体が重だるい」――こうした症状にお悩みの方、実はとても多くいらっしゃいます。当院でも、梅雨時期や季節の変わり目になると、「なんとなく不調」「疲れが取れない」といったご相談が増えてきます。

これらの症状の多くは、近年「気象病(天気痛)」と呼ばれるようになり、その正体として注目されているのが「自律神経の乱れ」です。今回は、最新の海外論文を交えながら、気象病と自律神経の関係をわかりやすく解説していきます。

 


最新研究でわかった「気象と自律神経の関係」

2022年にアメリカの生理学雑誌『Autonomic Neuroscience』に掲載された研究では、スマートフォンとウェアラブル端末を活用して、約200,000件もの心拍変動データを解析し、気温・気圧・湿度などの気象要因と自律神経活動(交感神経・副交感神経)との関連性が明らかにされました。

その結果、以下のような傾向が統計的に有意に認められました。

 

  • 気温が高くなると、交感神経の活動は低下(リラックス傾向)

  • 気圧が高くなると、交感神経の活動が増加(覚醒・活動的になる)

  • 降水量が多い(雨の日)ほど、交感神経の活動が低下(副交感神経が優位に)

つまり、天気の変化は、私たちの自律神経の働きにダイレクトに影響を与えているということがわかったのです。

 


気圧の変化が体に与える負担

自律神経は、交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)がバランスを取りながら、呼吸や血圧、体温、内臓の働きなどを自動で調整しています。しかし、急激な気圧の変化や気温の上下動は、このバランスを乱す原因となります。

たとえば、気圧が下がると内耳の気圧センサーが敏感に反応し、脳が「危険だ」と判断して交感神経が急に優位になります。その結果、頭痛やめまい、肩こり、胃腸の不調、不眠といった症状が出てしまうのです。

実際に、台風が接近する前日や当日には、頭痛薬の処方が一時的に増えることが全国の薬局データでも明らかになっており、これは気象病の影響と考えられています。

 


雨の日は副交感神経が優位に

一方、雨が降る日には副交感神経が優位になりやすく、体は休息モードに入ります。そのため、いつもよりぼーっとしてしまったり、集中力が落ちたりすることも。気分が沈みやすくなる「気分の天気依存性」を持つ方では、うつ症状が悪化することも報告されています。

特に、低気圧とともに訪れる「酸素分圧の低下」も影響しています。空気中の酸素濃度が下がると、脳への酸素供給が減り、疲労感や眠気、頭重感が強く出ることがあるのです。

 


自律神経を整えるにはどうしたらいい?

では、どうすれば天気の変化に負けない体をつくることができるのでしょうか? そのカギは、「自律神経の安定」にあります。

たとえば、次のような生活習慣が効果的です。

・毎朝同じ時間に起き、朝日を浴びること(体内時計がリセットされます)

・適度な有酸素運動を継続する(ウォーキングや軽いストレッチ)

・38~40℃のお風呂にゆっくりつかる(副交感神経が刺激されます)

・寝る前のスマホやカフェインは控える(交感神経が刺激されやすくなります)

また、近年では「耳のマッサージ(耳介神経刺激)」や「深呼吸法」も、気象病の予防として注目されています。耳たぶを軽くもんだり、鼻から4秒吸って口から8秒吐く深呼吸を毎日行うだけでも、自律神経は整いやすくなります。

 


気象病を感じたら、ひとりで抱え込まずに

もし、あなたが「天気が崩れると体調が悪くなる」「季節の変わり目になると不調が続く」と感じていたら、それは気のせいではなく、体からのサインかもしれません。実際に、国内調査でも20~60代女性の約6割が「気象病を経験したことがある」と答えています。

「病院に行くほどではないけれど、毎日つらい」「なんとなく調子が悪い」といったときこそ、自律神経のケアが必要です。私たちは、症状だけでなく、患者さんのお話や生活背景を丁寧にうかがいながら、ひとりひとりに合ったアドバイスや治療を心がけています。

自律神経の乱れは、糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの慢性疾患にも影響を与えるため、早めの対応が大切です。

 


自律神経失調症外来の御案内

気象病は「気のせい」ではなく、医学的にも説明できる状態です。そして、その背景には「自律神経の乱れ」が深く関わっています。天候の変化は避けられませんが、生活習慣やセルフケアを見直すことで、症状を軽くすることは十分に可能です。

「なんだか不調が続くな…」「病気ではないけど、つらい」そんなときには、どうぞお気軽にご相談ください。心と体のバランスを一緒に整えていきましょう。

岡崎ゆうあいクリニックでは自律神経失調症外来を行っていますのでお気軽にご相談ください。

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