2026.03.13 高血圧
塩分を減らしているのに血圧が下がらない5つの理由

「毎日の食事に気をつけて、しっかり塩分を減らしているのに、なぜか血圧が思うように下がらない…」そんなもどかしい経験をされている方は、実はとても多いんです。
減塩はもちろん大切です。でも、血圧に影響しているのは塩分だけではありません。今回は、減塩しているのに血圧が下がらない5つの理由を、最新の医学的な知見も交えながらわかりやすくご説明します。ぜひ最後まで読んで、ご自身の生活を振り返るきっかけにしていただけたら嬉しいです。
📋 最新の科学論文から見えてきたこと
デンマークで行われた臨床試験(Journal of the American Heart Association、2024年発表)をご紹介します。
この研究では、高血圧の患者さん72名を対象に、4週間にわたって自分自身で取り組む減塩食の効果を調べました。参加者のうち約3分の2のグループは、専門医から個別の食事指導(約20分)と書面資料を受け、週1回の電話フォローアップも行われました。
結果として、指導グループは1日あたりの塩分(塩化ナトリウム)摂取量が平均3.6g減少し、なんと71%の方が1日の推奨摂取量(塩化ナトリウム6g以下)を達成することができました。そして収縮期血圧(上の血圧)が9mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が4mmHg低下するという、臨床的に意味のある改善が得られたのです。
しかし同時に、この研究では「塩分感受性」という概念も浮かび上がりました。同じように減塩しても、血圧が大きく下がる人もいれば、あまり変わらない人もいる――それが現実なのです。この「個人差」こそが、減塩しても血圧が下がらない理由の核心に迫るカギになります。
理由① あなたは「塩分非感受性」かもしれません
血圧は、塩分の摂取量に対する反応の仕方が人によって異なります。医学的には「血圧の食塩感受性(Blood Pressure Salt Sensitivity:塩分感受性)」と呼ばれる概念があり、塩分を減らすと血圧が大きく下がるタイプの人を「食塩感受性あり」、あまり変化しない人を「食塩感受性なし」と分類しています。
研究によると、高血圧の患者さんのうち食塩感受性があるのは約50%、高血圧でない方では約25%と言われています。つまり、高血圧の方でも半数近くは、減塩だけでは血圧が下がりにくい体質である可能性があるのです。
食塩感受性は年齢・遺伝・腎臓の機能などに影響されます。「頑張って減塩しているのに効果が薄い」と感じる方は、このタイプに該当するかもしれません。担当の医師に相談してみましょう。
理由② 「隠れ塩分」がこっそり入っています
意識して塩分を控えているつもりでも、食品に含まれる「隠れ塩分」を見落としている方は少なくありません。
日本人の塩分摂取源として特に注意が必要なのが、加工食品・インスタント食品・外食です。たとえば、インスタントラーメン1食には約5〜6gの塩分が含まれており、それだけで1日の推奨摂取量(日本高血圧学会の目標値:男性7.5g未満、女性6.5g未満)の大部分を占めてしまいます。
また、味噌汁・漬物・醤油・ソース・ドレッシングなど、「少しなら大丈夫」と思いがちな調味料にも塩分は多く含まれています。パンやチーズ、加工肉(ハム・ウインナーなど)にも思った以上の塩分が潜んでいます。
「世界保健機関(WHO)は1日の塩分摂取量を5g未満と勧告しています」が、世界平均の摂取量は約10.78gと、推奨量の2倍以上とされています。外食が多い方や加工食品をよく食べる方は、表示を確認する習慣をつけることが大切です。
理由③ カリウム不足が血圧を上げています
塩分(ナトリウム)を減らすことと同じくらい重要なのが、カリウムの摂取量を増やすことです。カリウムにはナトリウムの排泄を促し、血管を拡張させて血圧を下げる働きがあります。
実は、減塩に加えてカリウムを意識的に摂取することで、血圧降下の効果がさらに高まることが複数の研究で示されています。カリウムを塩化カリウムに置き換えた「減塩代替塩」を使った大規模試験(中国で行われた約2万人を対象とした研究)では、脳卒中・心臓病・死亡リスクが有意に減少したという報告もあります。
カリウムを多く含む食品としては、バナナ・アボカド・ほうれん草・さつまいも・枝豆・豆腐などがあります。野菜や果物が少ない食生活の方は、減塩と同時にカリウムを意識して摂取してみましょう。ただし、腎臓の機能が低下している方はカリウムの過剰摂取に注意が必要ですので、必ず医師にご相談ください。
理由④ 生活習慣の「他の要因」が邪魔をしています
血圧は塩分だけでなく、多くの生活習慣の影響を受けます。以下の要因が重なることで、減塩の効果が打ち消されてしまっていることがあります。
【肥満・過体重】体重が1kg増えると収縮期血圧は約1mmHg上昇するとも言われています。内臓脂肪はインスリン抵抗性を高め、交感神経を刺激して血圧を上げます。
【アルコールの飲みすぎ】適量のアルコールは一時的に血圧を下げることもありますが、習慣的な飲酒(1日に日本酒換算で2合以上など)は血圧を慢性的に上昇させます。
【運動不足】有酸素運動(ウォーキング・水泳など)を週150分程度続けることで、収縮期血圧が5〜8mmHg程度低下すると報告されています。
【睡眠の問題】睡眠時無呼吸症候群(SAS)は夜間の血圧上昇と強く関連しており、治療なしには降圧薬を使っても血圧のコントロールが難しいことがあります。
【慢性的なストレス】ストレスは交感神経を活発にし、血圧を上げ続けます。
減塩しているのに血圧が下がらない方は、これらの生活習慣も一度見直してみることをおすすめします。
理由⑤ 薬の効果や二次性高血圧の可能性があります
降圧薬(血圧を下げるお薬)を内服中の方でも、薬の種類によって減塩の効果の出方が異なることが知られています。2024年に発表されたメタ分析(複数の研究をまとめた分析)によると、利尿薬やカルシウム拮抗薬を服用している患者さんでは、ナトリウムを100mmol(約2.3g)減らすことで収縮期血圧が最大10〜11mmHg程度低下することが示されています。一方、薬の種類によっては効果が異なる場合もあります。
また、約5〜10%の高血圧は「二次性高血圧」と呼ばれ、腎臓の病気・副腎の腫瘍・甲状腺の異常などが原因となっています。このタイプの高血圧は、原因となっている病気を治療しなければ、どんなに減塩しても血圧は下がりません。
「薬を飲んで減塩もしているのに血圧が下がらない」という方は、ぜひ一度専門医に詳しく相談されることをおすすめします。
🔍 まとめ――減塩は大切、でもそれだけじゃない
塩分を減らしているのに血圧が下がらない理由は、大きく5つ考えられます。
① 体質的に減塩の効果が出にくい「塩分非感受性」である
② 加工食品や調味料に「隠れ塩分」が潜んでいる
③ カリウム不足により血圧が下がりにくくなっている
④ 肥満・飲酒・運動不足・ストレス・睡眠時無呼吸症候群(SAS)など他の生活習慣が関係している
⑤ 降圧薬の種類や、二次性高血圧が影響している
どれか一つだけを見直せばよいというわけではなく、ご自身の生活全体をバランスよく改善していくことが大切です。一人で悩まず、かかりつけの医師と一緒に原因を探りながら、焦らず取り組んでいきましょう。
減塩は血圧管理の大切な柱のひとつです。でも、「こんなに頑張っているのになぜ?」と感じているなら、それはあなたの努力が足りないのではなく、別の要因が隠れているサインかもしれません。
血圧のことでお悩みの方は、岡崎ゆうあいクリニックにご相談ください。
