慢性疾患コラム

2026.04.14 高血圧

お酒と血圧の本当の話――「少量なら安全」はもう古い?最新研究が示す衝撃の事実


 

 

お酒と血圧の意外な関係――少量なら良いは本当か?

 

「お酒は少しくらい飲んだほうが、かえって体にいい」――そんな話を、どこかで聞いたことはありませんか?

晩酌を楽しみにしている方にとっては、思わず信じたくなる言葉ですよね。確かに以前は、「少量のアルコールは心臓や血管に良い影響を与える」という研究報告が注目されていた時代がありました。でも今、その常識が大きく揺らいでいます。

 


📊 日本発・6万人規模の最新研究が示したこと

 

2025年10月、心臓病分野で世界的に権威のある医学誌「JACC(米国心臓病学会誌)」に、非常に注目すべき研究が掲載されました。

この研究を行ったのは、東京の聖路加国際病院と東京科学大学の鈴木貴博医師らのチームです。

2012年10月から2024年3月の間に健康診断を受けた5万8,943人・合計35万9,717回の健康診断データを分析したもので、参加者の52.1%が女性、中央年齢は50.5歳という大規模なものでした。 JACC

これほどの規模で、しかも日本人の日常的な飲酒習慣を対象とした研究は、これまでほとんどありませんでした。

 


🍺 「少しだけ飲む人」こそ注意が必要だった

 

これまでの研究の多くは「大量飲酒」が血圧に悪いことを示すものでした。

「1日に3杯以上飲む人は血圧が上がりやすい」というのは、医学的にもよく知られた事実です。

しかし今回の研究が焦点を当てたのは、まさに「少量~中程度の飲酒をしている人」たちでした。

軽度から中程度のアルコール摂取であっても、血圧の上昇と関連していることが明らかになりました。そして、飲酒をやめること――あるいは飲む量を減らすだけでも――、血圧を臨床的に意味のあるレベルで下げる可能性があることが示されました。 American College of Cardiology

「少し飲む程度なら問題ない」という、長年にわたる医学的な”常識”が、この研究によって正面から問い直されることになったのです。

 


📉 飲むのをやめたら血圧はどう変わる?

 

研究では、飲酒習慣のあった人が禁酒した場合の血圧変化も詳しく調べられました。

飲酒をやめたグループでは、飲んでいた量が多ければ多いほど、血圧の低下幅も大きくなる「用量依存的な関係」が確認されました。 JACC

つまり、「たくさん飲んでいた人がやめると血圧が大きく下がる」のはもちろん、「少量しか飲んでいなかった人がやめても、血圧は下がる」ことが数値として示されたのです。

また、これまで研究データが少なかった女性に関しても、同様の傾向が確認されました。

従来の多くの研究は男性が中心で、女性のデータは限られていましたが、この研究では参加者の半数以上が女性であり、より信頼性の高いデータが得られています。

 


🔢 数字で見る「お酒と血圧」の現実

 

少し前(2023年)にも、アメリカ・日本・韓国の約2万人を対象にした国際的な分析研究が「Hypertension(高血圧)」誌に掲載されました。こちらも非常に興味深いデータを示しています。

1日あたりアルコール12グラム(ビール約350mlの缶1本に相当)を飲んでいる人では、収縮期血圧(上の血圧)が1.25mmHg上昇していました。

さらに1日48グラム(ビール約4杯相当)の飲酒では、収縮期血圧が4.9mmHgも上昇していました。 Celia Scott Weatherhead School of Public Health and Tropical Medicine

「1.25mmHgなんて、大した数字じゃないのでは?」と思われるかもしれません。

でも、毎日毎日、何年も何十年も積み重なっていったとき、その差は決して小さくはありません。

この研究では、低い量であっても高い量であっても、アルコール摂取量の増加と血圧上昇の間には継続的な関連が認められました。 American Heart Association

「飲まないよりは少し飲む方がいい」という”お酒の恩恵”は、少なくとも血圧という観点では確認されなかったのです。

 


💡 「ゼロが一番」という結論

 

今回の2025年JACC掲載論文の主著者である鈴木医師は、研究結果についてこのように述べています。

「血圧に関して言えば、飲む量が少ないほど良い。飲めば飲むほど血圧は上がる。以前は少量なら問題ないと考えられていたが、私たちの結果は、飲まないことが最善だということを示唆している」

この研究は、低レベルのアルコールが血圧に大きな影響を与えないという長年の思い込みに疑問を投げかけるものだとして、米国の医学誌編集長のハーラン・クルムホルツ(エール大学医学部教授)も注目しています。 American College of Cardiology

また、2025年のアメリカ心臓病学会・アメリカ心臓協会(ACC/AHA)による高血圧ガイドラインでは、非薬物療法として、女性は1日1杯以下(アルコール12~14グラム)、男性は1日2杯以下に制限するか、禁酒することが推奨されています。 EurekAlert!

 


🏥 血圧が高めの方は特に意識してほしいこと

 

もともと血圧がやや高めの方ほど、飲酒による血圧への影響が強く出ることも確認されています。 Celia Scott Weatherhead School of Public Health and Tropical Medicine

「少しくらい飲んでも大丈夫」という感覚は、健康な人には当てはまるかもしれませんが、血圧が高めの方、あるいは家族に高血圧(本態性高血圧)の方がいる場合は、特に注意が必要です。

高血圧(本態性高血圧)は、日本に約4,300万人いると言われる、非常に身近な疾患です。しかし、初期には自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心筋梗塞などの深刻な病気へとつながることがあります。

 


🌿 お酒をやめることが「治療」になる時代

 

降圧薬(血圧を下げる薬)を服用されている方の中には、「薬を飲んでいるから、お酒くらい少し飲んでも大丈夫」と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。

でも、今回ご紹介したデータが示すように、飲酒量を減らすこと・やめることそのものが、血圧管理において薬と同じくらい重要な「治療行為」になりえます。

薬に頼るだけでなく、日々の生活習慣を見直すことが、本当の意味での健康につながると、私は日々の診察の中でも強く感じています。

 


🌸 まとめ――「少量なら良い」はもう過去の話

 

今回の最新研究が教えてくれることを、改めて整理してみましょう。

  • 🔸 少量の飲酒でも、血圧は上がる
  • 🔸 飲む量が多いほど、血圧への影響は大きい
  • 🔸 禁酒・減酒は、量に関わらず血圧を下げる効果がある
  • 🔸 特に血圧が高めの方、女性、継続的に飲んでいる方は注意が必要
  •  

「お酒は百薬の長」という言葉もありますが、少なくとも血圧・心臓・血管の健康という面では、飲まないことが一番安心だということが、現代の医学が示す答えです。

「晩酌をやめたいけれど、なかなかやめられない……」「血圧が少し高いけれど、薬を飲むほどじゃないと言われている」「お酒と血圧について、もっとくわしく知りたい」――そんなお気持ちがある方は、ぜひ一度ご相談ください。

血液検査・血圧測定はもちろん、自律神経(じりつしんけい)の状態を可視化する検査や、生活習慣全体を見直すためのカウンセリングなど、あなたに合ったアプローチで一緒に考えさせていただきます。

 


岡崎ゆうあいクリニックにご相談ください。


📚 参考文献:Suzuki T, et al. “Blood Pressure After Changes in Light-to-Moderate Alcohol Consumption in Women and Men: Longitudinal Japanese Annual Checkup Analysis.” Journal of the American College of Cardiology (JACC), October 22, 2025.

 
 
 
 
 
 
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